工場出荷検査は、製品が顧客の要求を満たし、安全かつ信頼性のある状態で出荷されることを確認するための重要な工程です。本記事では、工場出荷検査の具体的な内容、目的、そして品質向上や信頼維持のために欠かせない理由について詳しく説明します。検査方法やその必要性について理解を深め、効果的な品質管理を実現しましょう。
工場出荷検査とは
工場出荷検査を簡潔に纏めると完成した製品が規定の条件下で顧客の注文通りの動きをするか出荷前に検査する事です。たいてい立ち合いの元で行われ、製作された機器や部品などが納品前に事前に定められた規制要件や運転範囲内(温度、湿度、雰囲気、圧力など)で意図した通りの動作をすることを確認、その検査結果を証明し文書化します。
工場出荷検査の目的
なぜ出荷前に検査を行う必要があるのでしょうか?不良品の流出を未然に防ぎお客様からの信頼を守るためでしょうか?お客様に迷惑をかけないためでしょうか?それらの視点は必要な事ですし間違いではありませんが、少しだけ目線を変えてみるとその成果が大きく変わってきます。「検査」という工程が増える事により製品の単価が上がってしまうのはお客様目線では望ましい事とは言えないでしょう。不良品を出さないという結果はあくまで製造側の保身のためであってお客様からすれば不良品がないのは至極当然の事なのです。
しかし不良品を100%排除するのは現実的ではなく「出荷検査をしない」という選択はするべきではないと思います。大切なのは検査によって判明した不良のデータを集め、その原因を排除していく事です。再利用できない材料を使用している製品の場合は、材料費削減の面で考えても不良品は減らすべきです。
検査結果を分析し、再発防止の計画を立てて実行し、その後の不良品状況をチェックするサイクルを繰り返すことで、不良品率は下がります。とはいえ、不良品率を0%にするのは難しいため、出荷検査は続けるべきです。しかし、不良品率が低ければ、検査項目を減らして検査費用を抑えることができます。
出荷検査の目的を「不良品の流出を食い止めるため」から「品質の向上のため」に考えを変えるだけでその意味合いや成果が大きく変わります。例えば、人間は風邪をひいた後に症状を抑えることはできても、完全に風邪をひかないようにすることはできません。しかし、生活習慣を改善することで風邪をひきにくい体を作ることは可能です。工場出荷検査も同様に、問題の根源を見つけて是正を繰り返すことで、問題発生を極限まで抑えることができます。
品質管理の一環として行う工場出荷検査
製造業でよく使われる上記のような計画、実施、確認、改善を繰り返すような仕組みをQC(品質管理)の言葉で「PDCAサイクルを回す」といいます。P、D、C、Aそれぞれの意味は以下の通りです。
- Plan
- 仕事の目的や内容をよく理解して目標を立て仕事の進め方を計画する
- Do
- どのようにやれば良いかを決め、準備を進め、実施する
- Check
- 実施結果が期待通りになっているか調査、確認し問題とその原因を究明する
- Act
- 究明された原因を元に改善事項を確認し改善に取り組む それぞれの頭文字を取ってPDCAですが、もし過去の実績が豊富で技術が確立されている場合は計画(Plan)の代わりに良い方法の標準化(Standardize)にして、SDCAとすることもあります。
SDCAはどちらかというと検査項目の見直しや品質の向上などを目的としていますが、考え方自体は不良品率を下げる場合にも利用できるのでどんどん活用して不良品率の低下を目指しましょう。また、品質管理には「後工程はお客様」という考えがあります。出荷される製品は完成品だけでなく半製品や部材、部品という場合もあり、そのような製品の不良品が発生してしまうと工程全体の流れが悪くなり、製造効率が下がってしまいます。部品の受入段階、製造段階、そして一つの工程が完成して次の工程に受け渡しをする前の段階でそれぞれ不良を食い止めて流れをスムーズにしましょう。
工場出荷検査を自社で行うデメリット
工場出荷検査という工程が一つ増える事によって、以下のようなデメリットも生じます。出荷検査を代行で行う業者に依頼することによりこれらのデメリットをクリアして工場出荷検査が行えます。
- 人手を割かなくてはいけない
- 教育のために専門技術を持った社員の時間が取られる
- 必要に応じて検査用機器を揃えなくてはならない
- 検査スペース、保管スペースが必要
工場出荷検査の必要性
では他社に依頼してまで工場出荷検査を行う必要性があるのでしょうか?先述したように品質管理の一環という目的で工場出荷検査を行うのが望ましいですが、当然その中に「お客様からの信頼」を守るという目的もあって良いのです。
納品後の不良品発覚により交換品の準備に時間を要すると、全体の納期が遅れてしまい客先やエンドユーザーに多大な迷惑と不信感を与えてしまいます。とくに新規プラント等の大型施設の建設などは、ほんの少しの遅れでも数億円の損失になる場合もあります。また、最悪の場合重大な事故に繋がる事があります。工場出荷検査を必要とする機器の場合、規定の条件下で動作する必要があり、中には危険区域内で使用されるものもあります。そのような機器が安全条件を満たしていないと感電や火災、爆発事故に繋がる恐れがあります。高額な損害や人身事故が発生するとそのお客様は確実に離れてしまうでしょう。お客様がいなくてはそもそも商売が成り立ちません。品質を管理、向上させつつお客様からの信頼も守るためにやはり工場出荷検査はとても大切な工程なのです。
また、昨今はインターネットやSNSが普及した事により、ひと昔前よりも悪い評価がかなり広まりやすくなっています。日本では買った製品は正常に動くのが当たり前という認識でいる人がほとんどのため、普通に動くだけでユーザーはわざわざレビューを書いたりしませんが製品が不良品だった場合はその怒りを鎮めようとレビューやSNSに投稿する人が多いのです。レビューやSNSの情報は買い手側にとって非常に助かるものですが、厄介なことに悪意をもって広める人も一定数いるのです。これは人間の攻撃欲求や承認欲求、集団心理による影響で、インターネットの匿名性とストレスの多い社会の影響により暴走気味になってしまっているというものですのでこの先もずっと続いていくものでしょう。そのような悪い評価を(正当な評価であれば)真摯に受け止めて改善する事も勿論大事ですが、避けられる低評価は避けるに越したことはありません。然り而して出荷前の検査は品質管理、品質向上、信頼の保持と様々な必要性を持っているのです。
工場出荷検査方法
目視検査
検査方法として最も一般的なものは目視検査です。主に傷、汚れ、変色、錆、寸法などの外観を実際に製品の全数ひとつひとつ手に取って人の目で判断します。人の目で行う事ですのでヒューマンエラーを避けるためにダブルチェックを行うこともあります。※安価で膨大な量の製品や検査によって壊れてしまう製品は、基本的に抜き取り検査(ロットごとに規定数を抜粋して検査する事)が行われます。
梱包状態の検査
梱包状態にも気を配らなくてはなりません。外箱の状態(傷、汚れ、凹み、穴など)、緩衝材が適切に使用されているか、同梱品が不足していないかを確認します。輸入品の場合は特に外箱に破損が多く見受けられるので注意が必要です。
機能検査
そして工場出荷検査では実際に電源を入れての検査、規定の過剰負荷をかけての耐用検査(非破壊)も行われます。ただし衝撃試験(靭性、脆性の検査)、引張試験、圧縮試験など破壊の生じる物理的特性試験は全数ではなく抜き取り検査が行われます。
文書化
また、検査結果をまとめ「いつ、どのロットの、何が、何個、どのようになっていたか、またどのような不良が発生したか」をまとめて文書化、データ化するのも出荷検査のうちです。先述のように品質管理に生かしてこそ出荷検査の意味が広がる為です。また、検査成績書を発行する場合もあります。※検査方法は検査対象によって異なります。上記は一般的な機械などに対する検査方法であり、例えばさらに厳しい品質が求められる医薬品には上記にない検査があります。
コンテックにできる事
コンテックでは工場からの出荷品の検査代行を承っております。少数からも受入可能ですのでまずは一度ご連絡ください。また、専門の技術を持った社員も在籍していますので、万が一の際は検査品の修理やタッチアップの対応も可能です。工場出荷検査は納品前の最後の砦となる大切な工程です。そしてその目的を確りと理解し目標を見据える事で大きな成果を得られます。自社で実施するにはデメリットが目立ってしまいますが、業務委託を請け負っている業者をうまく活用して品質向上を目指しましょう。
コンテックの検査設備
- 各種測定器、テスター、発生機(マルチメーター、メガー計、電流発生機、電圧発生機、他)
- 24時間監視のセキュリティ
- ±2℃以内をコントロール可能なエアコン
- 200V電源
- その他
全体の流れ
お問い合わせ→内容のすり合わせ→お見積もりという流れになります。
- お問い合わせ
- 内容のすり合わせ
- お見積もり
- 出荷検査開始
- 納品
納期や費用は台数などによりますのでまずは一度ご連絡下さい。また、事前に社内の様子をご見学頂く事も可能です(駐車場あり)。お預かり後実作業に入り、結果を文書にまとめてご報告いたします(成績書の発行もご相談ください)。その後納品となります。
コンテックの検査実績(2024年時点)
- 各種測定器の外観検査、測定検査、出荷前調整
- プラスチック製品の外観検査
- USBアダプターの外観検査、耐電圧検査、導通検査
- スイッチ製品の外観検査、耐電圧検査、導通検査
- 通信機器の外観検査、通信検査
- その他(出荷検査の他にも修理、校正や製作も行っています)