校正とは ~校正の意味と、計測器に定期的に校正が必要な理由~
- 2024/08/23 更新
- 「"校正"という言葉を聞いたことはあるけど、詳しく意味までは知らない……」
- 「計測器に校正が必要なことは知っていても、なぜ定期的にするのかはよく知らない……」
- 「校正について正しい知識を持ちたいけど、今さら人に聞くのはちょっと……」
とお思いの方は意外といらっしゃるかもしれません。
その疑問に、1978年の創業より電子機器、計測機器、精密機器などの校正・修理・点検・検査業務から豊富な知識と経験を蓄積してきた 株式会社コンテックが、専門的な観点からお答えします。 埼玉に位置する弊社では、東京・神奈川・千葉を含む、首都圏近郊の多数のお客様より長年の取引きを通じて多大な信頼を寄せて頂いております。
今回は、「校正とは何か?」「校正を先延ばしにすることで発生するリスクや企業の品質管理におけるデメリットは?」をわかりやすく解説します。
ご一読後に、計測機器の校正についての疑問やご依頼などありましたら、ぜひ一度お問い合わせください。
校正とは?
まずは「校正」の言葉の意味について解説いたします。 校正の本来の表記は「較正(こうせい)」となります。 その字の通りに「較べた結果」を確認する作業のことを指しますので、 校正に使用する標準器が示した正しい値と測定器が示した値との器差(誤差)を確認する(標準器の値との差分を示す)ことです。 言ってみれば現在の健康状態を知るための作業となります。 読み方が同じ「こうせい」で、漢字の違う「校正」と「較正」、実はそれぞれの意味も少し違いがあります。 どちらも標準器との器差(誤差)を確認するところまでは一緒ですが、 「較正」は測定器の「調整」を伴い、標準器の正しい値に近づけることで測定器本来の精度を取り戻したり従来の性能を発揮できるようになります。 一方、「校正」は測定器の「調整」は含まずに、あくまで標準器の値との器差(誤差)を確認した結果を示すものとなります。 本来はこうした違いがあるものの、「較」(コウ)の文字が常用漢字の音訓表にない読みのせいもあって「校正」と表記することもあるためか、 「校正」と「較正」を同様の意味で扱うことも少なくありません。
計測器に校正が必要な2つの理由
ここでは、計測器に校正が必要な理由として「トレーサビリティ」「経年変化」の2つをあげて、各項目で詳しく解説いたします。
理由その①:トレーサビリティ ~国家標準規格の要求事項~
製造業界での広がりをみせるQC活動やISOの取得なども、目指すところは自社製品の安全性や信頼性・品質の向上、品質を確保するためのリスク管理の強化、 顧客満足度の向上などではないかと思います。
そのための指標として非常に重要となるのが国際規格として用いられるISO9001やISO/IEC 17025(JCSS)であり、 計測器を使用している企業様への要求事項として「測定(計量)のトレーサビリティ」が設けられています。 ここで要求されていることを要約すると、「定期校正」と「トレーサビリティ」が必要なことがわかります。
トレーサビリティとは、製造業界をはじめとする販売業界や食品業界など、さまざまな業界に浸透しているシステムのことです。 トレーサビリティを英語表記すると「traceability」となりますが、これは「trace」「ability」を組み合わせた造語で、 直訳すると「追跡」の「可能性」という意味になります。 業界によってもトレーサビリティの定義には違いがあるようで「追跡可能性」という大枠の内容は共通ですが、 例えば製品のトレーサビリティは「製品がどこで生産され、どのように流通し、消費者に販売されているかの過程を追跡し把握する」ための システムとなっています。 肝心の測定機器を扱う企業様にとって必要な「測定(計量)のトレーサビリティ」は 「製品がどの測定機器で測定され、その測定機器はどのような標準器を使用して正しく点検・校正されたのか。 その頻度や周期はどれくらいのものなのかを把握する」ためのシステムとなっています。
ここでは「定められた間隔で又は使用前に校正をすること」が明示されていますが、その間隔や周期には言及されておらず、 実際に「校正の頻度や周期」を定める(決定する)のは、取引先企業からの要求であったり、 自社製品の品質保証といった信頼性に基づく企業様自身の判断となります。 測定機器に求める、あるいは求められる精度にもよりますが、年に一回の校正周期を定めている企業様が多いように見受けられます。 それより短い校正周期を定めている企業様ももちろん存在し、より高い精度が求められる場合に多いです。 自身で決めて良い、となるとその判断基準に悩んでしまうかもしれませんが、例えば工業規格など国ごとに定められた基準は存在しても、 各メーカーが自社基準をさらに厳しく設定することでより高品質な製品を作り出しているのと同様、 求める品質を維持するために適切と考える校正周期を設定するのが良いと思われます。
理由その➁:経年変化 ~万物が避けて通れない変化~
計測機器にとって不可避な存在といえる経年変化。その原因から、その結果起こりうるリスクについて触れています。
経年変化とは?
基本的に地球上の全てのモノは時間の経過とともに変化し、同じ状態を留めることができません。 身近な例をあげるなら、例えば住宅が年数を重ねて雨漏りが発生したり床が軋んだりするように、 あるいは道路に轍ができたりヒビが入っていくように、モノには例外なく経年による変化が訪れます。 自分の周りを見渡して頂ければ、「新品のときはもっと鮮やかな色だったのに」「新品のころはもっとスムーズに動いたのに」と 思い返す製品がひとつは見付かるはずです。 このような現象はモノが変質、変形、膨張したことや、それにより構成品にズレやゆがみが生じた結果であり、 外部から何かしら手を加えなければそれが勝手に元の状態に戻る事はありません。
経年変化が進むとどうなるの?
経年変化の影響を受けるのは計測機器を構成する部品においても例外ではありません。 例えば普段は目にする機会の少ない内部の基板や実装される電子部品、そして計測機器の多くはセンサー感応部で実測値を測り、 その結果をディスプレイに表示したり電流や電圧に変換して出力信号としてアイソレーターに送ったりしています。
経年変化によりセンサーが測定値を正しく受動することができなくなる他、センサーからの情報と出力値・ディスプレイの表示値に 齟齬が生じる可能性が発生します。 新品出荷時に計測機器は、測定値の基準となる標準器との誤差(器差)を各製品ごとの精度範囲に収まるよう調整されるわけですが、 経年変化にともないこの誤差(器差)は徐々に拡がっていき、最終的には製品の精度範囲を外れてしまいます。 「測定する」ことが命題の計測機器にとって正しい値が測れないことは致命的な問題ですが、 この状態でも機器としての動作には問題ないことも多いため比較対象がない場合には気付かないまま使い続けてしまうケースも考えられます。
経年変化が進んだ結果のリスクとは?
さらに経年変化が進むと、例えば機器のボタンなどは素材の硬化により押すことによってひび割れが発生します。 また、基板上でも金属の酸化や埃が溜まることによる絶縁不良が発生します。 細かいところで見ると基板上の電子部品の中でも電解コンデンサは寿命が設けられていて推奨年数を超えての使用は性能を著しく低下させます。 このように経年変化により本来の機能を活かせなくなったり、不具合を伴うほどに悪化するなど、 人にとって好ましくない状態まで変化が進行する状態は経年劣化と呼ばれます。
このような経年変化を放置していると、先ほど例に挙げたように外見上ではボタンが物理的に割れたりボタンの印刷が薄くなって 押し間違いなどの操作ミスのリスクが表面化します。 また、内部の基板上で経年変化が進むと回路上の電圧が正しく出力されずに実測値との間に誤差が生じたり、 内部抵抗が狂うことにより発熱・焼損につながったりして大変危険です。
まだある経年変化のリスク
ここまでは製品自体に焦点を当てて、物理的なリスクについて触れてきましたが、もうひとつ危惧されるのが間接的に引き起こされる 「不良品」「不合格品」の問題です。
自社から取引先企業様や一般ユーザー様へと製品を納品する際に実施される「検査・検品」では自社所有の基準となる測定器との比較により、 製品の合否を判定されていると思います。 しかし経年変化により本来の精度を発揮できない測定器を用いて判定された結果、 本当は不合格品として社内に留めておかなければならなかった製品が世の中に出回ってしまう…。 この事態は、顧客からの信頼や評価を得るべく日々の品質改善やコスト削減に尽力している企業にとって最も憂慮すべき事態のひとつです。 場合によって全数回収や再生産・廃棄処理などのコスト発生も考えられますが、 何より積み上げてきた信頼を失うことは数字に表せない多大なダメージとなって企業に損害を与えます。
計測器の精度を維持するための校正
ここまでご紹介したリスクを回避するために「校正」という作業が重要となってきます。 どんなに正しく調整された計測機器でも経年変化による標準器との誤差(器差)は避けて通れません。 そのため定期的な校正により現在の計測機器の状態を知ることが重要です。 校正とは、その計測器の正確性を保つために国内基準で調整された機器と比べてその誤差(器差)を正すことで、計測器を扱う企業にとって重要な作業となります。 コンテックでは適切に管理された校正環境と豊富な経験に裏打ちされた高い技術により、お客様の製品の信頼性をより確かなものにするサポートをいたします。 弊社の校正精度を高める取り組みについては こちらのページ に詳しく記載されていますので興味のある方はぜひ、ご一読ください。 本項では、計測器全般に共通する「校正」の流れをご紹介いたします。
校正作業の流れ
実際に弊社で校正作業を進めていく際の基本的な流れを見てみましょう。
校正(調整前確認)
お客様よりお預かりした計測器の現在の状態を知る(記録する)ため、お預かりした計測器が示した値と、 校正に使用する標準器が示した正しい値との器差(誤差)を確認します。
調整
計測器の値をより正確にするための作業として「調整」が必要となります。 計測器の値を標準器の正しい値に近づけることで計測器本来の精度を取り戻したり従来の性能を発揮できるようになります。
校正(調整後確認)
調整後の計測器が示した値と、標準器が示した正しい値との器差(誤差)を再度確認して記録します。
「校正→調整→校正」という一連の流れにより調整前と調整後で「標準器の正しい値」にどの程度近づいたのか、 今の「標準器との器差」はどの程度あるのかが示されます。 これによりISO 9001に記載された「校正のための測定機器がその目的に対して適切な状態(校正のための製品精度)が 維持されている(要約)」ことが満たされます。
調整で直らないときはどうすればいい?
「調整」の際に、測定器に備わった調整機能では機器精度の回復が困難なケースももちろん考えられます。 推測されるのは測定器の経年変化が進んだことで本来の性能が損なわれている状態です。 一度変質した物質がその特性を自然に取り戻したり、破損箇所が自然に修復することはありえませんので、 この状態から元通りの機能や性能に回復させる作業として「修理」が必要となります。 弊社ではこのような「調整でも機器精度の回復が困難なケース」への対応が可能です。
例えば、機器内部の基板上では金属の酸化や埃が溜まることによる絶縁不良の発生などが想定されますが、弊社では基板洗浄による処置が可能です。 また、基板上の電子部品の中でも電解コンデンサの劣化により回路上の電圧が正しく出力されずに実測値との間に誤差が生じたり内部抵抗が狂うことが 想定されますが、弊社では電解コンデンサの交換が可能です。 最近では手作業によるはんだ付けを引き受けてくれる企業もめっきり減ってしまいましたが、弊社では長年の実績と経験による手作業による はんだ付けを社内で継承しており、修理方法の選択肢を拡げることで機器の回復率向上に努めております。
修理について
その他にも原因不明の不具合が発生した機器の原因の究明と部品交換による修理を行っております。 機器で発生する主な不具合は基板上のコンデンサやICチップなど電子部品の焼損・劣化、パターンの腐食による回路断線などがあります。 弊社ではまず目視にてパターンの腐食が確認できる場合は回路上の繋がりや抵抗値などを確認してジャンパー線にて補修を行います。 また、電子部品に腐食や焼損が見受けられる場合は当該部品を交換します。 しかし基板の不具合は時に目視だけでは判断できない場合もあります。 そのような時は回路を順に追っていき「役割を果たせていない部品」を見つけ出します。 回路図が手に入らない機器も多々ありますのでそのような機器でも一つずつ丁寧に不具合を探し出します。 中には明確に故障しているものだけでなく少しの絶縁不良で抵抗値が不安定になっている場合もありますが、 そのような場合は基板の洗浄にて解決できることもあります。 洗浄に関してもどの部品がどのように働いているかを特定・理解することにより必要最低限の洗浄のみで解決できるようにします。 弊社ではPDCAサイクルの一環として検査の効率化と確実性向上のために専用の検査冶具を開発・作成し作業工程の見直しや改善を定期的に行っています。 これまでに水流発生・ループ装置や可変抵抗器、ケーブルチェッカーなど様々な検査冶具を製作しております。
校正サービスについて
弊社では、以下のような校正サービスの提供、及び校正の実績がございます。 以下に記載がないような校正のご相談ももちろんお待ちしております。
また、お客様に標準器を持ち込んで頂いて、校正スペースとして活用できる「校正室」も完備。 取引後の即日使用可能ですので是非ご相談ください。
対応可能な校正(修理/点検含む)
校正室と技術サポートについて、ご利用できる内容をご紹介します。 柔軟に対応しますので、ご相談事項がありましたらお気軽にお問合せください。
(*注)はサポート業務となります。
- 露点校正
- 液体校正
- 各種ガス校正
- JCSS校正*注
- 圧力校正
- 電気校正
- その他
校正の実績
弊社では、静電容量式などの露点校正、基準ガスを使用した酸素濃度計・ガス分析計の校正、テスト用配管による超音波式流量計の校正、 テストピースによる厚さ計・渦流探傷器の校正、それらの機器の出力値の校正実績がございます。
以下に記載がないような校正のご相談ももちろんお待ちしております。
- 露点校正
- 流量校正
- 渦流校正
- 空気校正
- 各種組成ガスによる感度校正
- 圧力校正
- 電気校正
- その他
校正関連設備の設置及び取扱い実績
- 露点発生装置
- 圧力充填装置
- センサー信号値自動取得装置
- センサー用チャンパー
- センサー用洗浄・乾燥装置
- 通信用サーバールーム
- 液体窒素CEタンク
- 各種組成ボンペ
- 測定機器パージ専用ラック
- 各種配管・バルブ設備などの設計・製作
- 流量発生装置
- 恒温槽
- その他
校正場所(所在地)について
東京・埼玉・神奈川・千葉を含む、首都圏近郊に位置する弊社は、東京都から一番近い「町」、埼玉県は三芳町に社屋を構えます。 首都圏各方面ICから関越自動車道三芳PAスマートIC出口よりより車で8分と好立地に加え、電車では池袋駅からの乗車26分をはじめ、 横浜(元町・中華街駅)からは直通電車ありと各方面からのアクセスも良好です!
- 住所
- 〒354-0041 埼玉県入間郡三芳町藤久保197-20
- Googleマップ
- 最寄駅
- 東武東上線 鶴瀬駅より徒歩15分(約1km)
池袋駅より乗車26分で最寄り駅到着!(急行乗り継ぎ時)
横浜(元町・中華街駅)より直通電車あり
千葉方面よりJR武蔵野線にてアクセス良好 - 最寄りの高速出口
- 関越自動車道 三芳PA スマートIC出口より車で8分(3.7km)
車でのお越しもお待ちしております。
各方面へのアクセスも良好です。 - 東京から最寄りのPA
- 関越自動車道 練馬ICから三芳PA まで13分(15.5km)
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- 東名高速道路 厚木ICから三芳PA まで75分(63.9km)
- 千葉県から最寄りのPA
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配送でのお預かりについて
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